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金曜の夜、安城駅前の広場は仕事終わりの人々で賑わっていた。ふと見上げると、駅の近くにある大きな電光看板に「スナック」「ガールズバー」など、どこか楽しげな言葉が踊っているのが目に入った。酒でも飲むか、なんて一瞬頭をよぎったが、今日はそんな気分でもない。ただ、どこか居心地の良い場所を探していただけだった。
歩き疲れた足を休めようと、人気の少ない路地へ入ってみた。すると、そこで思いがけず見つけたのは、小さなカフェのような店だった。薄明かりの中、「Lounge Anjo」と書かれた控えめな看板が目を引いた。
「こんなところに、こんな店が?」
興味本位でドアを押し開けると、中は思いのほか広く、上品な音楽が流れていた。カフェともラウンジともつかないその空間には、落ち着いた空気が漂っている。客席には数人しかおらず、それぞれが静かに時間を楽しんでいた。
「いらっしゃいませ」
すぐ近くで声がした。驚いて顔を上げると、女の子が微笑みながらこちらを見ていた。見た感じ、カフェのスタッフというよりは、どこかガールズバーのような雰囲気を持った彼女だ。しかし、その柔らかな笑顔に気負いはなく、ただ自然体で接してくれる。
「初めてのお客さんですね。何かお飲みになりますか?」
「あ、じゃあ…何かおすすめとかありますか?」
メニューを見渡してみると、コーヒーやソフトドリンクの他に、ワインやウイスキーといったお酒も揃っていた。「ここは飲み屋なのかな?」と頭をかすめるが、店内の雰囲気はそれらとはまた違う独特なものがある。
「よかったらこれをどうぞ」
差し出されたのは、ハーブの香りが心地よいオリジナルカクテルだった。アルコールは控えめで、フルーティーな味わいが疲れた体に染み渡る。
そのうち、隣の席に座る男性が話しかけてきた。安城に住んで20年になる地元の人らしい。
「ここ、面白い店だろう? 飲み屋とかスナックもいいけど、たまにはこういう静かな場所もいいもんだよな」
彼は店の常連らしく、ここがただのおしゃれなラウンジではないことを教えてくれた。話によると、この店は地元でも「願いが叶う店」としてちょっとした噂になっているらしい。
「え、本当に?」
冗談半分で聞いてみると、彼はふっと笑った。
「まあ、試してみればわかるさ。俺もここで一つ夢が叶ったからな」
店の奥にある壁には、小さなメッセージカードがたくさん貼られていた。「お酒で癒されました」「新しい仕事が見つかりました」「また来ます!」――訪れた人々の感謝の言葉や願い事がそこに記されている。
それから1時間ほど過ぎたころ、ふと時計を見ると、いつの間にかすっかり夜が更けていた。店を出ると、冷たい夜風が体を包む。だけど、どこか不思議な満足感が胸に残っていた。
安城の街は広い。この夜のように、知らなかった場所に出会うことがまだまだあるのだろう。そして、それは飲み屋やスナック、ガールズバーといった選択肢だけではなく、もっと自由で、自分だけの楽しみを見つけられる場所も含まれているのかもしれない。
次の週末は、どんな夜に出会えるだろう――。